#05 ツーリストシップって船
ツーリストシップって、「船」みたいじゃないですか。
岸から岸へ、移動して、ぷかぷかしている感じ。
Sさんのツーリストシップ
あなたの青が、待っている
とにかくスピード、迅速こそ価値とばかりに、 功利的に物事が進む、この喧騒の世の中で、 ふとした時に、まあ、いっかと、思ったりする。 束の間の休息、灼熱の太陽のもので、 浮き輪に乗っかり、 ぷかぷかと琵琶湖に浮かんでいた8月の頃。 嗚呼、青空って、普通の青じゃなかったんだと、 この歳になって気づかされたことがある。 ぷかぷか、という言葉は、 決して速さとか、旨さとか、価値とかとは、 およそ無縁に聞こえるオノマトペだ。 でもどこか、ずっとずっと奥の方で、 物凄い宝物がありそうな気もする。 現に私は、青空の青に出逢えた。 本当に指し示す空の色に、出逢えた。 ツップに出逢う時も、 せかせかと旅の順路を駆け回って、 観光地を一巡するときとは限らない。 現地の人に出逢い、 予想外の展開に戸惑い、 そのかけがえのない体験に胸が高鳴り、 帰路、思いを馳せる。 そんな予期せぬ歴史こそ、 まさに反効率主義の「遠回り」こそ、 ツップを生み出す沃野なのかもしれない。 岸から岸に移動するといっても、 果たしてそこが本当の目的地なのかどうかは、 案外、その歴史を振り返った時にしか分からない。 ツップにはそんな、途方もなく偶発的で、 意図しないのに“狙ったような”展開を期待させてくれる。 そんな遊泳を楽しんでいる「船」は、 言われてみれば確かにツップそのものだ。 高く上げた帆に向かう風が、 ツップの行く末を左右する。 慌てたり、焦ったり、 何かと慌ただしい世の中で、 そんな瞬間を積み重ねるにつけ、 すべてを「風」に変えてくれる。 やがて「船」は、動き出す。 そして、青空の青を、教えてくれる。 その航海で出逢う青って、 きっと貴方にとっての、貴方にしか見えない、 とても貴重な青に違いない。 「船」は今日も、そんな素敵な青を、 伝えてくれている。