#03 インスタントコーヒー
スイスの牧歌的な風景を前に、珈琲を頼んだら、予想外の展開。インスタントコーヒーが来た。
「さすがスイス」その意外性を楽しむのも、ツーリストシップではないか。
Tさんが語るツーリストシップ
それも旅だと、教えてくれる。
ないならないで、いいんだろうけど、 ないならないで、気になっちゃうもの。 例えば、刺身のつま。 あまりこれを、 バクバクと食べている人は見かけない。 満腹で店を出るとき、 “つま”は寂しそうに皿の上に残される。 こうれはもはや、 あってもなくても、 どっちでもいいのかもしれない。 けれど、もし仮にですよ。 皿の上にただ刺身だけが置かれているとしたら、 何だかそれが、解剖された生魚のみが示されているようで、 実に食べる前からもう、落胆しそうだ。 ツップという目に見えない心構えもまた、 それだけが立つと、何だかぎこちない。 そこに旅の粋のような、わびさびのような、 いや違う、そんな大層なものである必要はなく、 インスタントコーヒー一杯でも添えられれば、 刺身のつまよろしく、それは美味しい料理に生まれ変わる。 何かと何かが皿の上に存在する、あの心地よさは、 ツップと●●、といった具合にも見事に符合する。 ツップの意外性は、その符合でもって存在感を表すとともに、 だからこそ、ツップは旅行のプロセスに欠かせないものになっていく。 そんな未来を、「さすがスイス」から感じ取った。 さすが、の言葉の奥深いところで、 いろんな舌が見え隠れする。 ツップがそれを、包含する。 それも旅だと、教えてくれる。 皆さんにとって、ツップはどんな存在ですか。 ツップと何に、絶妙の相性を求めますか。 刺身のつまは、好きですか。 この、 はまるようで“はまらない”お転婆なところも、 ツップの持ち味なのかもしれない。